初色軸・R15
は、と耳元で吐き出される息を感じて、諸葛亮は身じろいだ。
寝台の脇の足元にちいさな火が灯されているが、真っ暗闇にはしないためのもので、輪郭を浮かび上がらせるくらいの明かりでしかない。
だから諸葛亮には分からない。情人がどんな表情をしているか。
盛り上がった筋肉の連なる体躯の手触り、膚の匂いと熱は、感じることができる。
体躯のずっしりとした重みも感じ取れる。けれど、――
「どうか、なさったのか」
「んっ」
ふいに膚の匂いが強くなって、身体が深く重なった。
「・・・そなたが、どういう顔をしているのか、気になって」
「俺の、顔」
「うむ・・」
手探りで頬に触れた。
明かりを避けるのは諸葛亮のほうで、暗がりであるからこそ身をさらけ出せている。
でも少し、惜しいとおもう。
ふてぶてしい面構えの彼が、閨ではどのような顔をしているのか見ることが出来なくて。
「快に顔を歪めたりするのか、そもそも快を感じているのか・・・?」
「なにを申されるかと思えば」
笑みの気配がした。
「明かりを、つけようか」
「・・・いや、いい!」
急いで否定すると、笑みの気配が深まって、口が重なる。
何度か戯れのように触れたあと、唇を開いて舌を触れ合わせた。
腕を伸ばして首に纏いつかせると、己の上で強靭な筋肉の連なりが身じろいで、膚同士がさらに密着する。
気持ち良くて意識がとろけた。
何度か戯れのように触れたあと、唇を開いて舌を触れ合わせた。
腕を伸ばして首に纏いつかせると、己の上で強靭な筋肉の連なりが身じろいで、膚同士がさらに密着する。
気持ち良くて意識がとろけた。
互いの身体を拭いたあとで、魏延は牀台に腰掛けた。
睡魔に絡めとられた恋人はのどかな寝息を立てており、美しい黒髪が敷布に流れていた。
頬に手のひらで触れる。
そなたが、どういう顔をしているか気になって、と白い手が頬に伸びた。
どういう顔をしているのかって。最中は飢えた獣のようであろうし、いまは腹が満たされきった獣のような顔であろう。
魏延は、夜目が利く。
だから軍師の表情がたいがい見えている。
熱を帯びた眼差しも、怯えを含ませた表情も、泣きそうな戸惑い顔も、快に浮かされてひそやかに喘ぐ様も、終わったあとの甘くとろけた様子も、だいたいはすべて。
無論、そんなことを白状しようものなら、枕を投げつけられた挙句、寝所から締め出されてしまう。
だから、内緒である。
手を伸ばして、小さな灯りを摘まみ消すと、寝所はやわらかな闇に包まれた。
真っ暗になってしまっては、いかに魏延でも見えない。
いとしい肢体を手さぐりで探り当てて引き寄せて、掻き抱いて眠りに落ちた。
真っ暗になってしまっては、いかに魏延でも見えない。
いとしい肢体を手さぐりで探り当てて引き寄せて、掻き抱いて眠りに落ちた。
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