頭の芯で鈍痛がやまない。喉もひどく痛む。
ひそかに侍医を呼ぶと、「風邪ですな」とあっさり断言され、その場で――つまり私の部屋で、薬草の調合がはじまった。
苦みのある青臭い匂いが、鼻の奥をつんと刺激する。
秘密にしてもらえますか、と頼むと、良いでしょう、見舞客が押しかけてもお困りでしょうから、という返答だった。
ですが、蒼龍殿はお気付きになるでしょう、と医師は肩をすくめる。
裏付けるように、足音が聞こえた。
「孔明殿・・!」
大事ありませんと言おうとしたのに、喉が痛んで声が出ず、かわりに空咳がこぼれ出た。男らしく整った清冽な容貌の眉が寄る。
働きすぎです。夜は休まれていたのか。食事をちゃんと摂っておられなかったのでしょう。まったくあなたは、いつもそうだ。
お説教が身に染み入る。薬草を煎じる医師が笑いに肩を震わせている。もっと言うてやりなされ、将軍。
出来上がった薬湯を渡され、苦いですかな?と聞かれるが、味は分からない。お風邪は身体が休養を求めているのです、長引かせるよりはまずは一日お休みなさいと言って、道具を片付けた医師は退室していった。
さあ、お休みに、と背を押されるようにされて、寝台へ。褥の中に押し込められる。
「傍におります」
布団の中でそっと、手を握られた。堅くてたのもしい武人の手。
身体も脳芯もふわりとゆるむ。
「何からもお護りいたしますゆえ、お休みください」
目を閉じるとすぐに、とろとろとした眠りにひきこまれた。
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