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YoruHika 三国志女性向けサイト 諸葛孔明偏愛主義
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 束縛と自由で5のお題  2)風より軽やかに・・・できてない趙孔

お題配布元:Nameless様 http://blaze.ifdef.jp/

 

 

 

建安13年。長江・赤壁にて孫権・劉備の連合軍は曹操と対峙し、火計により撃破。

南屏山拝風台にて東南の風を祈祷したとされる軍師諸葛亮は、追っ手を逃れ、劉備軍に帰陣していた。

 

 

 

「孔明が、目覚めないのだ、趙雲」

主君に問われて、趙雲はその精悍な眉をひそめた。

「はぁ・・?」

 

精根が尽き果てたのか、軍師は昏睡のような深い眠りにおちていて、目覚めないのだという。

仮の陣地である。急ぎ、移動する必要があった。

 

「耳元でメシだぞ!!~って叫んだら、飛び起きるんじぇねえのか」

「無理だろ、お前じゃあるまいし」

張飛の提案を劉備があっさりと却下する。

 「枕元に、軍師の好物でも置いたらどうか」

見事なひげをしごきながら関羽が提案する。劉備は手を打った。

「好物か。ふぅむ、良いかもなあ」

好物を置いたら目覚めるって、どこの幼児だ。趙雲は内心であきれた。しかしながら一方で、あの変わり者の軍師なら、そういうこともありそうだという気もする。

 

「孔明の好きなものか。ふぅむ、そうだなあ、本と、菓子と、・・・あっ、」

なぜか、劉備と張飛と関羽が、趙雲を振り返った。

「・・なんです、主公?」

そんな期待を篭めた目で見られても。戦場に、本や菓子なんて持ち込んでいるはずもない。

 

劉備に背を押されて、趙雲は、軍師の天幕へと押し込まれた。

 

軍師はうすぐらいなかに横たわっていた。

ぴくとも身じろがず、人形のように。

近寄って、膝をつき、のぞきこむ。

(・・痩せたな)

そっと、手を伸ばした。

頬に触れる。

 「起きてください、軍師」

ひたいにも、触れた。こめかみにも。そしてもう一度、頬に。

「あいにく本も、菓子もありませんが。あなたを待っているものがおります」

 

ゆるやかにまぶたが震えた。

ゆっくりと、うるわしい黒眸があらわれる。

 

諸葛亮は、やわらかく微笑した。まるで花がほころぶように。もう人形にはみえない。
 

「・・・おはようございます、趙将軍。朝、目が覚めてさいしょに見るのがあなたの顔だなんて、なんてよい一日のはじまりなんでしょう」

 

趙雲は、ふっと息を吐いて、立ち上がり、冷静に突っ込んだ。

「いまは夜です、軍師」

 

 

天幕の外で劉備が腹を抱えて笑っていた。

「心配して損したぞ、孔明。元気じゃないか」

「目が覚めたなら、ようござった」

ゆったりと構える関羽。

「愛の力すげえ」「本と菓子に勝ったぞ将軍」

兵卒がさわぐ。

 

 

軍師が、幕舎から出てきた。うーんと伸びをしている。

「食事を」

「ひさしぶりに、聞きました、将軍のそのせりふ」

 

くすくすと軍師が微笑する。長江をふきぬける風より軽やかに。

惹きあうように近づいて。

こつん、と額同士が触れあった。

 

「おかえりなさい、軍師」

「ただいまもどりました、将軍」

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