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YoruHika 三国志女性向けサイト 諸葛孔明偏愛主義
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馬超が風邪を引いて寝込んでいると聞いて、心ばかりの見舞いの品を整えた諸葛亮はその邸を訪れた。
「いらっしゃあい!諸葛亮殿!」
陽気な出迎えに噴き出しそうになった。
「馬超殿のお具合はいかがなのですか、馬岱殿」
「すっごい鼻風邪。鼻水ずびっずびで、若ってばもうかわいそうなのよ」
よよ、と泣き真似をするので、悪いと思いつつ諸葛亮は笑った。
重い病ではないとあちこちから聞いてはいたが、馬岱がこの調子なのだったら大丈夫なのだろう。


「・・・千客万来とはこのことだ」
見舞うと、色白の容貌の尖った鼻を赤く腫らした馬超がもぞもぞと寝床で身じろいだ。
「貴公ら、いったい何を考えておるのだ。それぞれ重鎮の身で、なんでいちいち自らやって来る。移ったらどうするのだ」
「心配で、つい」
諸葛亮は肩をすくめた。
知っている。
劉備は侍医を連れて訪れ、張飛は薬を持って訪れ、趙雲は果実を持って訪れ、黄忠は花を持って訪れ、魏延は薪を持って訪れた。
その下の世代の若者たちはさすがに遠慮して訪問はしなかったが、それぞれが見舞いの品を訪れるものに託した。
なので、馬超の居室には果物や薬をはじめ色々な物がうず高く積みあがっている。

枕辺では、梅に似た黄色い花が、細工物のように繊細な花弁を咲かせていた。
「蝋梅の花ですね、奥ゆかしい・・・これはどなたが?」
「黄将軍が」
「さすがは黄忠殿、風流なことを。良い香りがいたします」
「・・・俺は今、匂いなぞ分からん」
情けなさそうに、ずびりと鼻をすする。

「はぁい若。お薬の時間ですよぉー」
「またか・・・」
馬岱がにぎやかに入ってきて、馬超がうんざりしたように身を起こした。
「不味いのだ、それは」
「絶対そう言うと思ったのよ。なので、諸葛亮殿から頂いた花梨の蜂蜜漬けを添えてみました!」

起こした背に着物を羽織った馬超が、諸葛亮に目を向け、不器用に微笑んだ。
「・・・かたじけない」
「花梨の果実は炎症を抑える薬効があるとか。少しでもご不快が治まれば良いのですが」
「それほど悪くはないのだ。まったく、不甲斐ない」

薬湯を飲むのを見届けたあと、辞した。
頭の後ろで手を組んだ馬岱がほてほてと付いてくる。
目を細めて諸葛亮は笑った。
「風邪は気の毒ですが・・・何かすこし、うれしいものですね」
「そう、なんだよねぇ」
見詰めあって、馬岱も同じような、共犯者めいた笑みを交わす。
「・・病は気からと言いますが。風邪は、気がゆるんだときに引いてしまうものですから」
「同感。獣ってさあ、外では弱みを見せないよねえ?寝込むのは、巣に戻ってから。若ってば具合悪くても馬で駆けまわってるうちに忘れてた、みたいな無茶ばっかりしてたからねえ」
「そう、ですか」
「寝込む場所が出来たのは、なんだかうれしいかもねえ」
「この国が馬超殿にとって、安堵して休息をとれる巣のような場所になっているのなら、喜ばしいことです・・・もちろん馬岱殿、あなたにとっても」
「俺は平気。どこでも休めるから。でも若は違うからねえ」

「ここで、結構ですよ。・・・どうぞ付き切りで、甘やかして差し上げてください」
「若を?うーん、もうものすごく甘やかしてるのよ俺」
「でしょうけど」
「あなたは?諸葛亮殿。俺に甘やかされたくないの?」
「・・・顔を見るだけで、十分です。あなたの存在は・・・、私をとても心地よくさせて下さっていますよ・・」

白面が少し照れたように笑んだので、馬岱の胸もほっこりとあたたかくなる。
帰したくはない気もするけど、今日はだめ。寂しがりの獣に、付いていてあげなきゃ。

「あなたが風邪を引いたら、付き切りで甘やかすからね、諸葛亮殿。大船に乗った気で、どーんと俺に甘えなさいねえ」
「はいはい」
諸葛亮は笑いだしながら馬に乗った。
「馬岱殿も、ご自愛を」
「それは俺の台詞」
馬岱は破顔して大きく手を振った。
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