風はさやさやと木立をゆらして、木漏れ日が部屋にしのびこむ。
ひだまりと化した執務室。
軍師はふわぁぁと大あくび。
筆の音が、ぱったりやんだ。
これだからこの軍師は目がはなせないのだ…
ふうとため息を吐いたのは、灰銀の鎧をまとった偉丈夫。
こんな機密が詰まった部屋で、のんびりうたたねをする人がいるだろうか。
見れば、彼がかさねた両手の下に敷いているのも、重要でなくはない書類のようなのだが…
機密はなにも部屋に山と積まれた書類だけではない。
もっとも重要で価値の高いものは、すこやかな顔で眠りこむご本人だ。
「そんな顔で寝ていられると、起こせないな…」
つぶやきを感知したのだろうか、軍師は繊細な睫毛を震わせ…ふたたび眠りに落ちた。
趙雲は音をたてないように扉に行き、こっそり錠をおろした。
まえに同じことをしたときは、秘め事のためだった、が…
「大丈夫。目を覚まされるまで、お守りいたします」
そんなやすらいだ顔で眠っていられては、手は出せない…から。
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