忍者ブログ
YoruHika 三国志女性向けサイト 諸葛孔明偏愛主義
[99]  [98]  [97]  [96]  [95]  [94]  [93]  [92]  [91]  [90]  [89
*できてない趙孔



漢の時代、官吏の休みは五日に一度だったらしい。
対曹操軍の最前線に位置している劉備軍では五日に一度のお休みというのは無理だとしても、休養日は一応ある。

「孔明、お前は休め。気分転換が必要だ。明日は遊べ。よいか、童心にかえって遊ぶのだ!」
と主君に命じられてしまったからには、遊ぶしかあるまい。

「ぅ~ん・・よく寝た」
寝台の上でもぞもぞとうごめいた諸葛亮は、起き上がって伸びをした。
本日遊ぶのに備えて昨夜は早寝した。気分は爽快で体調は万全である。
「さて遊ぶか。なにをしようかな」
遊ぶには、遊び相手が必要だ。
着替えた諸葛亮は、足取りも軽く兵舎に向かった。

「趙将軍は、騎馬にて城外へ出ていかれました」
「ああ、そうですか」
ああ、そういえば趙子龍殿は朝が早いのだった。
こんなに日が高くなってから遊びのお誘いにくるのでは遅すぎたな。

「ではどなたか、私と遊びませんか?」
「えっ」
城の警備を受け持つのは趙雲の隊だが、兵舎の入口に近いこのあたりにいるのはただの兵卒である。下っ端の彼らは軍師のお誘いに硬直し、うろたえた。

「あれ、軍師様?」
「趙雲様を探してますか?」
「朝駆けに行っておられますよ」

通りかかったのは趙雲部隊の方々だ。確か第七部隊だ。一ケタの部隊は精鋭である。

「どなたか、私と遊びませんか?」

「え?」
「へ?」
「は?」

第七部隊隊長は、とりあえず言ってみた。
「ええと、遊ぶって、なにをしてですかね?軍師様」
「くじをつくってまいりましたので、こちらから一つ引いてください」
軍師がささっと綺麗な色の巾着を取り出す。
「はい、では。あ、【手合わせ】ですね。――え、手合わせ?」
「軍師様、趙将軍と手合わせする気だったんですか?」
「猫が虎に立ち向かう感じっすね」
「きたない手を使えば、いけそうな気がします」
「色仕掛けは駄目っすよ。なんか死人が出そうで」
「なんで色仕掛けですか。私は男子ですからそんなことはしませんよ」
「えっと、あっはい」

「とりあえず、木剣があるので、ちょっと打ち合ってみますか?軍師様」
とりあえず構えて、軍師に打たせてみた木剣を受けた第七部隊隊長は、息を呑んだ。
ぽこん、と音がしたのだ。
え、木剣ってこんな音するか?
カアン、ガコ、ボゴ、バキ、メキ、ドカッではなく、ぽこん、である。
何度か打ち合ううちに、ぽこん、から、コン、と音が変化したのでほっとした。

「お、上手です!筋がいい!上達してます!軍師様!!」

第七部隊長は、部下を褒めて伸ばすタイプだった。

「軍師様、俺ら槍使いなんで、木槍も持ってみてくださいよ!ちなみにこちらは趙将軍スペシャルで、趙将軍の槍と同じ重量になってます」
「わあ、重いですねえ。すごいすごい」

「趙将軍って、キメポーズとかないもんなあ。関羽将軍なんていつもキメッキメなのに。あんくらいやってくれねえかな」
「趙将軍、無言だしなあ。張飛将軍みたいに、うりゃあ、どりゃああ、って雄叫びも、あんまねえし。叫ばなくてもいいっすけど、名乗りはかっこよくやってほしいな」

「常山の趙子龍だ、みたいなことしか言っておられないですよね、それなりの武将相手限定ですけど。あ、そうだ見てください。趙将軍の真似」

「常山の趙子龍がお相手いたそう!」
と叫んだ軍師がいきなり大技を繰り出したので、第七部隊はびっくりした。
後ろ手にくるっくるくるっとトリッキーに槍を回したかと思うと突然前方を突くやつだ。速度は十分の一以下であろうが、動きの再現性はほぼ完璧である。

「うわっ、軍師様、上手い!!」
「ええっ、あの技って、近くにいる俺らでさえ速すぎて何してんのか分からねえのに」
「趙雲様自身も、あれ、何してるのか分からん、って言ってたな」
「乱戦になったら身体が勝手に動くらしいからな」

「人体の構造からして、長い棒状の物がああいう動きをするのでしたら、こうだと思いますよ?ええと、後ろ手に手首をこちら側に返して左手に持ちかえながら指先で引っ掛けて回して、たぶん左手で宙に投げて肩で一旦固定して方向を定めてから右手で受け止めて前に突いているのだと思います」

「軍師様、すごい!」




愛馬に乗って朝駆けをし、爽やかな清々しい気分で戻ってきて城門をくぐった趙雲が見たものは、各自それぞれに思いつく趙子龍のかっこいい名乗りをやってみたり、趙子龍にやって欲しいキメポーズをそれぞれキメッキメにキメてみたり、趙子龍の槍さばき(十分の一速度)を再現したりして、全力な童心にて趙子龍ごっこして遊んでいる部下と軍師の姿だった。

「あ、趙雲様!お帰りなさい」
「あ、将軍、お帰りなさい」
趙雲のことが大好きな彼らは、趙雲の姿を見つけると喜んで口々に叫んで手を振った。


・・・見なかったことにして通り過ぎていいか?
愛馬にきくと、馬はぶるんと尻尾を振って、とことこと軍師に近づいた。
しまった。
趙雲の愛馬は軍師に餌付けされており、軍師のことが大好きなのだった。


「趙雲殿、遊びましょう。ささ、くじを引いてください」




PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
mail
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (管理人しか読むことができません)
カレンダー
06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
バーコード
ブログ内検索
最古記事
(03/24)
(03/25)
(03/29)
(03/30)
(04/06)

Copyright (c)SS倉庫 All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Photo by Kun   Icon by ACROSS  Template by tsukika


忍者ブログ[PR]